研究への
取り組みResearch
研究への取り組み
当科の研究は豊富な臨床研究を特徴とし、特に白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫などの造血器悪性腫瘍を対象とするものが多いです。
当科オリジナルの研究も数多く進行中で、附属病院、柏病院、第三病院が共同で研究を行い、短期間で多くの症例を集めることが可能となっています。また、全国のhigh volume centerが連携した多施設共同試験への参加率も高く、これらの研究結果は論文という形で学術誌に掲載され、新たなエビデンスとして蓄積されていきます。多施設共同試験の遂行には多くの努力を要しますが、自らが創出した新たなエビデンスに基づいた医療を患者さんに還元することができるということは極めて大きな喜びであり、やりがいでもあります。
さらに、臨床研究だけでなく、臨床薬理学講座と共同で行う基礎研究にも力を入れ、最新の治療法開発に貢献しています。
Clinical Research臨床研究
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多施設共同研究
私たちは多施設共同試験への参画を通じて、新たなエビデンス創出を目指しています。日本成人白血病治療共同研究グループ(JALSG)、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)、関東造血幹細胞移植共同研究グループ(KSGCT)など共同研究グループにおいて多くのワーキンググループに所属し、主任研究者や事務局を務め、そしてその結果を英文論文として発表しています。
研究実績
- 同種造血幹細胞移植後長期生存患者の骨塩量の評価KSGCTにおける横断的観察研究(KSGCT)
- 腫瘍由来循環 DNA を用いた移植後微小残存白血病病変に関する多施設共同前方視的解析研究(KSGCT)
- 慢性骨髄性白血病患者に対するチロシンキナーゼ阻害薬中止後の無治療寛解維持を検討する日本国内多施設共同観察研究(JSH)
- 急性前骨髄球性白血病に対する亜ヒ酸、GOを用いた寛解後治療-第Ⅱ相臨床試験- JALSG APL212(JALSG)
- 初発フィラデルフィア染色体陽性成⼈急性リンパ性白血病を対象としたダサチニブ併用化学療法および同種造血幹細胞移植の臨床第Ⅱ相試験(JALSGPh+ALL213)(JALSG)
- JCOG1911: 高齢者または移植拒否若年者の未治療多発性骨髄腫患者に対するダラツムマブ+メルファラン+プレドニゾロン+ボルテゾミブ(D-MPB)導入療法後のダラツムマブ単独療法とダラツムマブ+ボルテゾミブ併用維持療法のランダム化第III相試験(JCOG)
- 本邦の初発APLに対するATRA+ATO療法の有効性に関する多施設共同第Ⅱ相試験(JALSG)
- 小児・AYA・成人に発症したB前駆細胞性急性リンパ性白血病に対する多剤併用化学療法の多施設共同第Ⅲ相臨床試験(JALSG)
- JCOG2008: 未治療抗腫瘍量濾胞性リンパ腫に対するオビヌツズマブ+ベンダムスチン療法後のオビヌツズマブ維持療法の省略に関するランダム化第III相試験(JCOG)
- JCOG2201: 中枢神経系再発高リスクの未治療びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する中枢神経系再発予防を組み入れた治療法のランダム化第Ⅲ相試験(JCOG)
- JCOG2210: 未治療末梢性T細胞リンパ腫に対する初回導入化学療法後の完全奏効例に対する自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法のランダム化第III相試験(JCOG)
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単施設での研究
附属病院、第三病院、柏病院で治療方針の共有、臨床研究の推進を目的に、白血病、リンパ腫、骨髄腫ワーキンググループ(WG)を設立し、定期的にオンライン会議を開催しています。日々の臨床から新たな研究課題を見つけ、スピード感をもって研究を進めています。
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白血病
白血病WGは急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病や骨髄異形成症候群に対するがん薬物療法と同種造血幹細胞移植の治療方針の構築や学術研究について主に活動しています。毎月開催している会議では骨髄検査の顕微鏡像の供覧、学会発表や論文作成の相談、臨床研究・治験の情報共有などを行っています。
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悪性リンパ腫
リンパ腫WGでは、日々進歩する悪性リンパ腫診療に対し、日常診療の経験や疑問から各種リンパ腫の疾患背景、治療などに関する臨床研究を立案し、研究を進めています。また、月1回のリンパ腫WG会議や病理診断医と合同で開催するリンパ腫病理カンファレンスを通じて日常診療や研究課題に関して活発に議論を行っています。
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多発性骨髄腫
骨髄腫WGでは附属病院、柏病院、第三病院で治療方針を統一することで、患者データを用いた臨床研究を継続し、国内外の学会で多数の発表をいたしました。学会発表は原則論文にすることを目標にします。慈恵関連3病院だけでなく、多施設共同研究にも参加し貢献しております。治験にも参加しており、世界の骨髄腫診療に貢献できるよう尽力しております。
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緩和ケア・支持療法
がんの苦痛を和らげること、治療を安全に実施することを目標に、多職種での臨床研究に取り組んでいます。また、「発熱性好中球減少症」、「腫瘍循環器」のガイドライン作成に携わるなど、がんサポーティブケア領域において学会との連携を通して日本のがん診療に貢献しています。
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Basic Research基礎研究
当科では、難治性血液腫瘍の新たな治療法開発を目指し基礎研究に取り組んでいます。
まず、フィーダー細胞を用いて効率的に難治性白血病細胞株を樹立し、その分子遺伝学的な特性を詳細に解析することで、疾患メカニズムの解明を進めています。また、DNA障害性抗がん剤の感受性に関与する分子として知られるSLFN11(シュラーフェン11)に着目し、血液腫瘍における役割を研究しています。標的遺伝子の発現レベルや機能的変化が、白血病細胞の薬剤感受性にどのように影響するかを解明することで、個々の患者さんに最適な治療法の選択や、新規治療の開発につながることが期待されます。
これらの研究を通じて、難治性血液腫瘍の克服に向けた新たな知見の獲得を目指しています。